「モノづくりに関わる仕事がしたい」。そんな思いを抱いて建築の世界に飛び込む方は多いのではないでしょうか。
自分の手掛けた建物を色々な人の生活の場になり、何十年もの間地図に残る。とてもやりがいの感じられる仕事だと思います。
私も同じような理由で大学の建築学科を卒業し、給排水設備の施工管理会社に就職しました。
施工管理といえば、建築に携わる職種の中でも最前線に立つ「現場マン」です。常に現場で仕事をし、自分の仕事によって目の前で建物が出来上がっていくのを見届けることが出来ます。
しかしながら、「モノ作りが好き」という理由で施工管理会社を選んだのは間違いだと、今では強く思います。正直、地獄のような毎日でした。
あなたも入社してから、「これはなんか違う」と感じたことがあるのではないでしょうか?
「3年は同じ会社で頑張って」と言われる中、私はわずか半年で退職しました。職場で精神に不調をきたし、その後数年間は転職を繰り返しましたが、現在はネット関連の仕事をしています。
そんな私が今回お話しすることが、どんな方向であれあなたにとって前進のきっかけになれば幸いです。
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新卒で施工管理を辞めたくなった理由
勉強や資格を軽視する風潮
私が職場で上司からよく言われていたのは、「勉強できても仕事ができなきゃ意味がない」です。
仕事をする場所ですから、仕事の出来不出来で評価されるのはある程度当然かもしれません。しかし、私の職場ではそれを通り越して「勉強する暇があったら残業しろ」という風潮がありました。
施工管理に関する資格は様々あり、それらの勉強をすることで専門的な知識を身に付けるのは非常に有益なはずです。更に資格を取得すれば業務の幅も広がり、自分のキャリアアップになります。
にも拘わらず、職場の先輩や上司は資格やその勉強を軽視する人が多くいました。
それでも私がいた会社はまだマシな方でした。同じ現場にいた別な施工管理会社の社員は、資格取得のために勉強することに対して全くと言っていい程理解が得られず、講習にすら行かせてもらえていなかったのです。
失礼な話かもしれませんが、建築の現場マンの世界は、学歴の低い人達の受け皿のような側面を持っています。勉強のできない人が上の立場に立った結果、学歴や学力、勉強を軽視するような風潮が生まれているように感じました。
相手に伝わる話し方をしない
建築の業界は全般的に専門用語が多く飛び交う世界ですが、その中でも施工管理は格別だと思います。
施工管理の現場で働いていると様々な業界用語を耳にします。しかし特に厄介なのは現場特有の言い回しや略語、そして「あっち、そっち」のような漠然とした指示です。これらは事前に勉強する術がありません。
現場で作業している時に「それ持ってあっち行って」「そっちからあれ持ってきて」などと言われることがありますが、相手が言う「あっち」を示すところをいつでも汲み取れるとは限りません。
現場は屋外で、そこら中に色々なものが置いていますから、余程わかりやすい状況でなければ勘違いは起きるでしょう。
そんな現状なので、現場に出てみると、とにかく周りの人が話していることがわからないのです。
しかしあくまでも現場では上司が絶対。わからないでは通用しませんし、もっとわかるように言って欲しいとも言えないのがつらい現実です。
そもそも指示やコミュニケーションは、相手に意図が伝わらなければ意味がありません。受け手が正しく理解しようと努力することも必要ですが、話し手が相手にとって理解しやすいよう工夫することも必要なはずです。
それなのに現場の職人や上司はそれをしません。指示の意味を伝える努力を怠るばかりか、理解できない新人を叱り、バカにしてきました。バカは相手に伝わる言い方の出来ない指示側のはずです。
正直、「私が現場特有の用語を一通り理解したとしても、彼らとは一緒に仕事できないな」と心の奥で感じていました。
職人への対応に苦労する
現場では新人であっても施工管理の担当ですから、一応職人たちをまとめる立場になります。
全員ではないとはいえ職人は高齢で気性が荒く、仕事ができない人をバカにする傾向は施工管理以上に強くなっています。こちらが何か指示をしても、若手の言うことはまともに聞いてもらえません。
あなたの現場にもいるかもしれませんが、私が現場で関わった職人の中にも、人間性に問題がある、いわば「仕事のことしかわからない人」が少なからずいました。
彼らにとって、安全管理のための決まりを守らないというのは序の口で、時には仕事中に職人同士で喧嘩を始める人や、施工中の建物内のトイレで用を足すことさえありました。
新人であってもこういった職人に指示や注意をする場面はありますが、当然彼らが新人の注意を素直に聞くはずもありません。そのため対応には非常に苦労しました。
残業・休日出勤は当たり前
残業や休日出勤の温床として、建築業界は有名でしょう。そのイメージにたがわず、私が勤めていた会社でも残業や休日出勤は当たり前にありました。
定時という決まりも、固定残業代でカバーできる時間を越えて残業しないという会社方針も、実際はあってないようなものです。代休や有休についても、現場の上司や会社に決められたタイミングでしか取れません。
私の現場では定時を越え、上司が「もう上がって良いよ」と言ってから、更に30分ほど残ってやっと帰るというのが暗黙の了解のようになっていました。
それでも上司は新人よりずっと遅くまで毎日残業していました。それを見て、自分も将来上司の立場になったら今以上に残業しなきゃいけないのかと思い、自分がこの会社に勤めていて幸せに生きている将来がイメージできなくなりました。
「モノづくり」というイメージからかけ離れている
私にとっては致命的な理由だったのですが、施工管理という仕事は学生がイメージするような「モノづくり」とは違うように思います。
私は元々モノづくりが好きという理由で建築を学び、たまたま縁があって施工管理の業界に入りました。
ですが施工管理会社に入社して感じたことは、そこは個人が皆と同じ感覚を持っていることが求められる環境だということです。
新人を募集する時は「個性ある仲間を待っている」など耳触りの良い言葉を並べていましたが、現場に入ると、そこには「普通はこう」という圧力が厳然として存在するのです。
一つの建物を皆で作る仕事ですから、目的意識や方針を皆で共有するのは理解できます。しかし周囲の人と考え方や解釈のポイントが違うことがあるために、異常なやつ、仕事のわからないやつとみなされるのは納得できませんでした。
モノづくりの仕事はクリエイティビティを大切にし、各々の個性を取り入れながら進めるものというイメージがありますが、施工管理はその反対で、寧ろ個性が邪魔になる仕事だと感じました。
新卒で施工管理会社を退職し交通警備会社のアルバイトへ転職した理由
- すぐに採用が決まりそうだったから
- 業務内容が簡単そうだったから
- シフトを自由に決められたから
実のところ、私は転職先を決める前に施工管理会社を退職してしまいました。当時の私は仕事で精神を病み、いつ現場の屋上から飛び降りてもおかしくない状況だったからです。
そのため、とにかくできるだけ早く脱出することが最優先でした。
失業保険を受け取る要件も満たしておらず、貯金も十分には無かったため、辞めた後は急いで次の仕事をさがしました。交通警備のアルバイトはその時に見つけたものです。
交通警備員は基本的に人手不足なうえ、働き手も高齢者が多いです。そのため若い人は警備会社にとって需要の高い存在であり、求人に応募すると採用されやすいのです。
法的な要件を満たしており、余程問題のある人でない限り面接直後に採用されるという感触です。
警備員の仕事は天候に関係なくあるため身体的にきつい場合もあり、また現場の事故を防ぐという責任ある立場にあります。しかしそれでも施工管理の仕事よりは簡単で楽だと感じました。
施工管理の現場で、自分はダメな人間だと完全に自信を失っていた私にとっては、いくらか自信を取り戻すのに丁度いい仕事でした。
その上シフトも週1日以上と自由度が高く、無理なく続けられたこともありがたかったです。
新卒で施工管理を辞めてOKな人、NGな人
施工管理を辞めたくなる理由は沢山あるでしょう。出来ることならすぐにでも辞めたいところですよね。しかし辞める前に一度、辞める理由や辞めた後のことについて必ず考えるようにしてください。
施工管理は大変なことも沢山ありますが、魅力も多い仕事です。自分は本当に施工管理を辞めたいのか、施工管理を辞めることのメリットとデメリットのどちらが大きいのか、一度冷静になって考えてみましょう。
辞めてはいけない人
- 建築が好きな人
- 現場主義な人
- 試用期間中の人
まず、建築が好きという思いがあるなら、一度踏みとどまって冷静になることをお勧めします。現場主義な考えを持っている場合も同じです。
人間関係などが原因で、一時的に業界自体が嫌になっている可能性があります。
冷静に考えても、「やっぱり施工管理より設計がしたい」などのようなビジョンがはっきりしているなら別ですが、単に今の職場環境がきついという理由だけで本来好きな業界から離れても後悔するでしょう。
また、試用期間の途中で辞めるのはお勧めしません。
一般的に試用期間はまだ現場にも出ていないか、現場に出ても上司について回り、逐一教えてもらいながら仕事をしているはずです。
この間はまだ現場事務所の準備や道具運びといった雑用しかしておらず、自分に合うかどうか判断するにも不十分である上、面接の場で施工管理の経験があるともアピール出来ないことが多いです。
辞めていい人
- 建築業界に未練がない人
- 別な方法で建築に携わりたい人
- 精神的・身体的に追い詰められている人
辞めてはいけない人の反対になりますが、特に建築や施工管理の業界に留まりたいと思っていない場合は寧ろ早めの退職をお勧めします。また設計や営業など、別なアプローチで建築に携わりたい場合も転職は効果的でしょう。
周囲の年長者は「辛くてもとりあえず3年は今の会社で頑張れ」という意見がほとんどですよね。ですが私は辞める決断は早い方が良いと考えています。
若いうちに退職するのは抵抗があるかもしれませんが、寧ろ若い人材の方が企業からの需要は高く、転職には有利になります。
また心身共につらい人は、無理に決断を先延ばしにすることでうつ病をこじらせるリスクがあります。一度こじらせるとその後の回復には多大な労力と時間がかかるため、転職どころか仕事をすること自体が難しくなってしまいます。
中には自殺など、取り返しのつかない結果になる例も実際にあります。焦りは禁物ですが、大事な決断を後回しにしてはいけません。
施工管理からのおすすめ転職先
設計事務所
一旦施工管理会社に入社してから、「やっぱり設計がしたい!」と思い直して設計事務所への転職を目指す人もいます。
そもそも設計事務所を志望するも縁がなく、第2希望として施工管理に就職する人が少なくないからです。
設計職に転職する場合、ゼネコンだと実際に経験のある施工管理の部署に配属される可能性が高いため、小規模でも設計事務所がおすすめです。
あなたの現場でも、「設計事務所が現場のことをわかってない」という不満を聞くことがあるかもしれません。つまり裏を返せば、施工現場の事情に理解のある人が設計を担当すると重宝するのです。
その点では、施工管理の経験者は設計事務所への転職に有利と言えます。
専門職公務員
私がいた現場にも、公務員への転職を目指している若手社員がいました。
市役所や都道府県庁にも建築関連の部署があり、一般事務ではなく専門職という枠で募集しています。その業務は行政が発注した建物の現場見回りの他、建築工事の申請に係る処理など多岐にわたります。
施工管理に携わった経験は面接でのアピールポイントになりますし、最前線から退きつつも、引き続き現場に関われるため転職後も経験が役に立つでしょう。
卒業後すぐであれば新卒枠で受けることが出来、中途採用と比べ業務で即戦力になることを求められません。ただし受ける自治体によっては建築職の募集が少ない、或いは無い場合もあるので注意は必要です。
進行管理・マネジメント
施工管理を辞めても、転職先でも同じように外で体を動かす仕事をしているイメージしか湧かないかもしれません。
しかし施工管理を続けていると、かなり幅広い業種で活きる感覚が身につきます。
現場では効率よくプロジェクトが進むよう、様々な作業が同時進行していますよね。
施工管理として経験を積むと、言われた作業をこなすだけでなく、作業の進捗を把握しながらやるべきことを考えることが求められるようになります。
そのため、全体を見通す感覚や、指示を出す力が養われるのです。
建築以外の業種でも、プロジェクトの進行を管理する立場の人がいます。施工管理として現場を動かしてきた経験は、業種関係なくこのようなポジションに立つ時に役立つでしょう。
新卒で施工管理から転職するときのポイント
精神科の診断を受ける
もし今の職場にいて精神的につらいのなら、一度精神科を受診することをお勧めします。何故なら診断の結果次第では、有利な条件で退職でき、転職活動がしやすくなる場合があるからです。
私は精神科を受診しなかったので自己都合退職となりましたが、その場合仮に失業保険を受け取れるとしても、3か月の待機期間が発生します。
一方、心身の故障で仕事を続けられなくなったことを証明できれば、退職後すぐに失業保険を受け取れるのです。
退職してもお金が途絶えないとなれば、退職・転職活動も格段にしやすくなるでしょう。
自分が何をしたいのかよく考える
私の場合、施工管理会社にいた時はとにかくそこから自由になりたいという思いで一杯でした。ですが急いで辞めた結果、数年間転職を繰り返す生活になりました。
原因は自分がどんな仕事をしたいのかを考えていなかったためです。
辞めた後でゆっくり考える余裕があれば別ですが、特に新卒社員の場合は私のように貯金も少なく、失業保険を貰う要件も満たしていないことが多いでしょう。
そのような状態で急いで退職しても、結局急いで転職しなければならなくなり、結果的に不本意な転職を繰り返すことになるのです。
それでは勇気を出して退職した意味がありませんよね。だからこそ「施工管理をやめたい」だけでなく、「退職後、自分はどんな仕事をしたいか」までよく考えましょう。
正確でなくとも、一応の結論を出すことが重要です。
退職の意向を伝える
恐らく退職願を出す時、上司はあなたを引きとめようとするでしょう。若いうちに辞めるのなら尚更です。
ただし退職の理由や決意が固まっているのなら、それをしっかり伝えましょう。なるべく本当の退職理由を伝えることをお勧めします。
何も言わずに突然いなくなるのでは、会社が困るのは勿論、後々自分に余計な手間がふりかかってくるかもしれません。
「退職願を提出する時に怒られるかも…」「辞めるまでの間職場にいづらくなるかも…」と不安に思うかもしれません。実際相手によっては色々と言ってくるかもしれないので、ある程度勇気が必要です。
とはいえあなたは悪事を働こうとしているわけではありません。あくまでもあなたには退職する権利があります。
そのことを念頭に置き、一度勇気を持って意向を伝えると、不思議と気持ちが軽くなるものです。
まとめ
本当に辞めたいのなら決断はなるべく早い方が良いと思います。もしあなたが上司から「3年は頑張ってみなよ」と説得されているのなら、その言葉を信用する必要はありません。
しかしもしあなたが、辞めたいけど一歩踏み出せないでいるのなら、未来の自分をイメージしてみましょう。
このまま3年後、施工管理を続けている自分と辞めている自分では、どちらの方が幸せに生きているでしょうか?
辞めるも続けるもあなた次第です。上司の多くは続けるよう説得するでしょうが、続けた結果あなたが心を壊し、取り返しのつかない様態になったとしても、上司は何ら責任を取りません。
だからこそ、自分がどうなりたいのか、惑わされずに考えることが大切です。 私は今、ネット関連の仕事をしていますが、あのとき辞めて良かったと今でも思っています。
私の経験が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
まずは、あなたの市場価値を調べてみませんか?
もし今の仕事に不満があるなら、ミイダスを使い転職できるかを確かめてください。
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